愛でるように連れ歩く、世界で1つしかない日傘

東京都現代美術館を訪れたこの日。清澄白河周辺を散策をするつもりだった彼女は、厳しい夏の日差しから逃れるように近くのカフェへと駆け込んだ。

注文したアイスラテを待っている間、ガイドマップを兼ねたフリーペーパーを広げてみる。目に留まったのは、一軒の傘専門店。

「一点物の日傘……?」

テイクアウトに変更したラテを片手に、彼女の足はそのお店──『Coci la elle(コシラエル)』に向かっていた。

パラソルみたいな軒先の中は、おとぎ話のような世界

『Coci la elle』は、住宅街の中に突然ぽっとあらわれた。

まるでパラソルのような、まあるい軒先をくぐる。ガラス張りの入り口から、さんさんと降り注ぐ陽の光がまぶしくて、彼女はなんだか温室にいるみたいな気持ちになる。ディスプレイされた傘たちも気持ちが良さそうで、陽にすかした観葉植物の葉脈を見ているようだ。

店の奥へと続くアーチを覗くと、静かな印象の入り口とはうらはらにカラフルな傘がずらりと並んでいた。

傘、傘、傘! ほんとうに傘の専門店なのだ。どきどきする胸を抑えながら、彼女はさらに奥へと足を踏み入れた。

触れる手がふるえるような特別な傘

天井から吊るされた、羽根が敷き詰められた傘や、ふさふさのフリンジがついた傘を見上げて驚く。中世ヨーロッパのアンティークのようだし、現代のポップアートのようでもある。

「日傘はどれもで手作りの1点物なんです」と店員さんがいう。

華やかな装飾に目を奪われるが、ハンドルもひとつひとつ異なる。ぐるりと輪っかになっているものや、寄木細工にビーズ刺繍、涼やかなアクリル樹脂までさまざまだ。

「触ってみてもいいですか?」と店員さんに声をかける。あまりに繊細で美しいので、気軽に触れてはいけない気がした。

「どうぞ、開いてみてください」

コシラエルの傘は、すべてオーナーで作家のひがしちかさんがデザインしているという。一見奇抜に思えるデザインも、開いてみるとなんだか馴染んでしまうから不思議だ。ひがしさんが自然の中からデザインの着想を得ているからかもしれない。どれも、とても優しい表情をしている。

ドレスを選ぶように日傘を選ぶ

美しいレースの日傘にうっとりしながら、彼女にある疑問が沸いた。

「コシラエルの日傘にUVカット効果はあるんですか?」

「1点ものはデザイン重視なのでついていないんです。綿や麻の生地の日傘は80%ほど遮光されます」

UVカットが欲しい方にはこちらを、と晴雨兼用の傘を案内してもらう。でも、もう彼女の心には1本の傘が浮かんで消えない。夕焼けの空のようなデザインに、金色のフリンジ、ライオンのハンドル。こんな素敵な傘はみたことがなかった。一期一会だ、と購入を決めて、お会計をお願いする。

「なんだか使うのがもったいなくて‪……‬ずっと家に飾っておこうかな」とつぶやく彼女に、店員さんは微笑む。動作を確認するため、美しい傘をもう一度ひらいて言う。

「でもやっぱり、傘はひらいた状態が一番すてきなんです」

オレンジの中に滲むピンクや紫をみて、彼女は「さして帰ります!」と宣言した。とっておきのドレスを選ぶように決めた日傘は、晴れの日をもっと輝かしくするに違いない。

世界で一番すてきな日傘を手にした彼女の胸は、お店の入り口をくぐったときよりもっと高鳴っていた。

Editor's Note

手に取っただけで胸が高鳴るような傘に出会った事はありますか?

「そんな大げさな」と思う方もいるかもしれませんが、コシラエルさんでそのような傘にたくさん出会いました。

自然の中で生まれたような美しい色彩、繊細なレースやビーズ刺繍、落とす影までも美しいレース生地など、持ち手から石突にいたるまで、こだわりにこだわった一点ものの傘たち。傘に対する愛と想いがしっかりと伝わってきます。

バッグさながら、刺さずに腕に掛けているだけでも素敵なのですが、コシラエルさんの傘は刺してこそ!閉じている時の印象と開いた時の印象の違いに、二度驚かされるでしょう。

全て一点ものなのでお値段は張りますが、恋に落ちる様に傘に出会う、他ではできないそんな体験ができる素敵なお店です。(編集部 Joe)

Shop Access

Shop Info

Coci la elle(コシラエル)

11:00〜18:00

不定休

03-6325-4667

東京都江東区三好2-3-2

清澄白河駅 徒歩5分

※取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせください。
Editor 小西麗
Photographer 橋本越百

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