熟成日本酒で重ねられた歳月を祝う

営業先から戻る途中、彼女は袴姿の女子大学生を見かけた。今は卒業シーズン。彼女は、10年以上前の自分の卒業式を振り返った。

私にもあんな時期があったんだなぁ、という懐かしさは、自然と学生時代の思い出につながっていく。そこで彼女の頭をよぎったのは、ゼミでお世話になった教授のことだった。

この春に還暦を迎える教授に贈り物を買おう。そう決めた彼女は、前から気になっていたSAKE SHOP福光屋丸の内店に足を運んだ。

お祝い事にふさわしいお酒を探しに

ゼミの飲み会で美味しそうにお酒を飲んでいた教授の姿を彼女はよく覚えていた。ぜひ美味しいお酒を贈りたいけれど、残念ながら彼女はお酒に詳しくない。特に日本酒の美味しさは未だよくわかっていなかった。

そこで、アドバイスをもらいながら決めるのがいいだろうと、このお店にやってきた。長い歴史を持つ酒蔵が開いている日本酒の専門店だ。

一歩お店に入ると、落ち着いた雰囲気の店内には酒瓶がいっぱい。とりあえずざっと見て回ろうか、と商品の説明に目を通し始めると、店員さんが声をかけてくれた。

「何かお探しですか?」

彼女は、お酒好きな人への還暦祝いを贈りたいが、お酒の好みも知らないし、自分も日本酒に詳しくないことを告げる。

「お祝い事でしたらこちらがおすすめです」と紹介されたのが、「加賀鳶 純米大吟醸千日囲い」。契約栽培した酒米「山田錦」を仕込み、さらに千日間低温熟成させたという。錦絵ラベルがおめでたい席に映えそうだ。

冷酒かお燗か、といった飲み方の基本的な説明から、金沢で最も古い歴史を持つという酒蔵の歴史まで、店員さんの話す内容は初めて耳にすることばかり。次々に興味深い話が出て来て、さすが酒蔵が直営する専門店の店員さんならではと、彼女は話に引き込まれた。

さらに珍しいお酒を紹介してくれる。

お酒好きな方にこそ贈りたい特別な日本酒

「これは瑞秀(みずほ)というブランドで、ワインのように醸造した年によって味が異なるんですよ。ここに仕込まれた年が入ってますよね」

見比べてみると、造られた年によって価格もかなり違っているのも興味深い。数も少ないため、福光屋の直営店以外ではあまり手に入らないそうだ。

お酒をよく知っている人が喜んでくれるような、こだわりのあるものがいいと伝えてみたところ、「それならば…」とおすすめされたのが、「百々登勢(ももとせ)」。

「5年、10年、20年と、気温の変化に従ってどんどん熟成させていくんです。瑞秀と同じく熟成させた日本酒ですが、ほら、色も変わっていきます」

熟成の期間によってお酒の色がどんどん濃くなって、山吹色から琥珀色のように変化しているのが一目瞭然だ。これまでの日本酒のイメージとまったく違う点に惹かれ、せっかくなので試飲させてもらうことにした。

とはいえ、お酒に強くないうえ、日本酒はほとんど飲まない彼女。おそるおそる口をつけてみる。

「うわ、飲みやすい」

思わず口にしてしまうぐらい、口当たりはさらさらとなめらかで、香り高い。

「お年を召された方でしたら、本当に美味しいお酒を少し楽しんでいただくのもいいかと思いますよ」

そう聞いて、彼女は「百々登勢」の十年熟成されたものを贈ることに決めた。

贈り物探しのついでに自分への買い物も

包装をお願いしている間に、店内を見て回る。

純米酒粕パウダーとお塩をブレンドした調味料やお米の発酵から生まれる化粧品など、お酒を飲まない彼女でも楽しめそうな品物がいろいろある。

そんな中、彼女の目を引いたのは甘酒のコーナー。飲む点滴と言われ、体にいいとよく耳にしていたので、前から気になっていたのだ。カロリーが20パーセントオフされ、特になめらかな口あたりだという「シルキー糀甘酒」を自分のために買って帰ることにした。

興味深いものがたくさん見つけられたので、普段は来る機会のない専門店を訪れてよかったと、ずっしり思い紙袋を手にした彼女は思う。

大学の頃も、あの先生を介して、こんな風に新しいものとの出会いがたくさんあったっけ。「百々登勢」を手に喜んでいる先生の顔を思い浮かべて、彼女はうれしくなった。

Editor's Note

日本酒専門店でありながら、甘酒や発行を利用した化粧品などバラエティ豊かな品揃えが魅力の『SAKE SHOP 福光屋』。美味しそうなお酒のアテもたくさんラインナップされており、おつまみ好きの私は思わず胸が踊ってしまいました。

また、普段はあまり日本酒を飲まないのですが、試飲させていただいた「百々登勢」は予想よりもずっとすっきりとした味わいで飲みやすく、日本酒を開拓してみたいなと思うきっかけとなりました。(編集部 フクシマ)

Shop Access

Shop Info

SAKE SHOP 福光屋 丸の内店

11:00〜20:00

なし

03-5288-5015

東京都千代田区丸の内3-1-1 国際ビル 1F

有楽町駅 徒歩5分

※取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせください。
Editor 村山幸
Photographer 有本真大

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