続いていく「時」と「思い」を包む

久しぶりの東京だ。

本社への出張で銀座を訪れていた彼は、ききすぎた暖房に蒸されて汗ばんでしまったワイシャツの袖をまくり上げた。腕時計の針は午後5時過ぎを指している。帰りの新幹線までは、あと2時間ほど余裕があった。

とはいえ、滅多に来ないからといって特にこれと言ってやりたいことがあるという訳でもない。とりあえず駅までの道を戻ろうか……と何となく歩き始めたところで、彼の視界にわずかに見覚えのあるビルの姿が飛び込んできた。

あれ、そういえばあそこって確か……

前回出張に来た時の記憶を手繰り寄せつつ、彼はギンザ シックスの前に立ち止まる。

「お土産ってセンスが出るよね」と釘を刺されても安心

そうそう、こんな感じだったな。あれは1年半くらい前だっけ。

彼が訪れたのは、ギンザ シックスの6階にある「銀座 蔦屋書店」。前の出張で一緒だった後輩に連れられて足を運んだ場所だ。

アートと日本文化をテーマとしているこの銀座 蔦屋書店は、本だけでなく、日本の伝統技術を活かした生活雑貨や、こだわりの文具なども扱っている。確か、前回は部署へのお土産もここで買って帰ったんだった。ちょうどいい、今回もそうしよう。

ここでしか手に入らない限定品がたくさんあるんですよ、と後輩が声を弾ませていたことを思い出しながら、彼は本棚の横を通り過ぎていく。本当は立ち止まって一冊ずつゆっくりと手に取りたいのだが、何せあまり時間がない。お土産選びも大事だが、この店のこと思い出した時から、彼にはもうひとつここで見つけたいものがあった。

手元に置いておきたくなる「日本の文化」がある

部署のメンバーへのお土産には、オリジナルパッケージのティーバッグを何種類か選んだ。本型のパッケージに惹かれてつい手に取った「濃い 和三盆しょこら」は、慣れない本社でのプレゼンを無事に終えた自分へのちょっとしたご褒美に。

この「和三盆しょこら」は日本のショコラティエとのコラボによって生まれた商品で、カカオ以外の全てが日本の素材でできているのだという。「日本人が好きな日本の味」を追求し、食を通して日本文化を楽しむことができるという点が、まさにこの銀座 蔦屋書店らしい。

そう、日本文化と言えば、この奥も面白いんだよな。

お土産の箱を手にした彼が次に目指すのは、入り口側から見て右手奥にある文具コーナーだ。万年筆やオリジナルのインクに加え、藍染の革小物なども並んでいて、時間の許す限り隅から隅までじっくりと見て回りたくなる。

へえ、あれは万年筆を入れるための文具箱で、あっちは黒いガラスの江戸切子か……

あちらこちらへと興味をそそられるのを抑えつつ、彼は近々転職するチームの同僚の顔を思い浮かべる。彼が今ここで見つけたいと思っているのは、その同僚に贈るはなむけの品だった。

アメリカ出身のその同僚とは、入社以来ずっと同じチームで仕事をしてきた。やや内気な自分と違い、いつも明るくチームを盛り上げてくれるムードメーカーの彼に、これまで何度も助けられてきた。だから、彼の口から退社の知らせを聞いた数日前から、今までの感謝の気持ちを込めてちょっと特別な贈り物がしたいと考えていたのだ。

伝統から生まれるモダンに出会う

いわゆる「日本人よりも日本に詳しい系外国人」のその同僚は、旅先などでもよく日本ならではの雑貨や食器を買っているのだという。特に伝統的な技術や手仕事の感じられるアイテムには目がないのだ、と飲み会の席で話してくれたこともあった。

この店で選んだものであれば、きっと気に入るに違いない。そう思った矢先、彼の目にひとつのタンブラーの輝きが映った。

手に取ってみると、まずその想像以上の軽さに驚く。それから、手触り。まるで和紙を触っているかのようにさらりとした優しい質感が、彼の手のひらによく馴染んでいた。

ふと、ディスプレイに氷水の入ったタンブラーが置かれていることに気付く。なるほど、冷たいものを入れても本体は全然冷たくならないんだな、と感心していると、彼の後ろを通り掛かった店員さんが言う。

「その氷、朝の10時に入れたものがまだ残っているんですよ」

彼が思わず「えっ?」とやや上ずった声で聞き返すと、「もちろん温かいものもしっかり保温してくれるので、チーズフォンデュだってできちゃいます」と自信たっぷりな言葉が返ってきた。

このSUSgalleryのチタンタンブラーは、新潟県燕市で受け継がれている金属加工の技術による真空二重構造になっていて、とにかく抜群の保温性能を持っているらしい。つまり、燗でも冷でもいける。同僚はビールと同じくらい日本酒も好きなのだ。

感謝の気持ちを風呂敷に包んで

うん、もうこれしかないんじゃないだろうか。

心の中でそう呟いて、彼は例のタンブラーを贈ることに決めた。

「プレゼントでしたら、こちらの風呂敷ラッピングもおすすめですよ」

先ほどの店員さんが、彼の前に色とりどりの風呂敷を並べてくれる。ああ、これも絶対好きだろうなぁ。同僚の喜ぶ顔が脳裏に浮かんで、彼は気付けば首を縦に振っていた。

「それ、同僚に贈ろうと思って選んだんです。彼はお酒が好きだから、ぴったりのものを見つけられました。」

やっぱりここに来てよかった。品物を包んでもらうのを待っている間、彼の口は自然とはにかんでいた。

長年受け継がれてきた伝統の技と、大切な同僚であり友人である彼への感謝の思い。そのどちらもが、この先ずっと続いていってくれたらいい。少し照れくさいけれど、素直にそう思った。

笑顔で風呂敷包みを手渡してくれた店員さんにお礼を言って、彼は店を後にした。

Shop Access

Shop Info

銀座 蔦屋書店

10:00〜22:30

GINZA SIXに準ずる

03-3575ー7755

東京都中央区銀座6-10-1

銀座駅 徒歩2分

※取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせください。
Editor 福島みづき
Photographer 橋本越百

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