飾らない私が出会う、旅する猫の和雑貨たち

よく晴れた昼下がりには猫が似合う。

覚えたての一眼レフカメラを手に、彼女は雑司が谷エリアを散歩していた。

彼女の目的は、自由気ままに街を歩く野良猫たちの姿を写真におさめること。猫好きな彼女は、数ヶ月前に購入したカメラをきっかけに、週末になるとこうして知らない街へと繰り出している。

うららかな4月のある日、被写体を探しながら住宅街をぶらりぶらりと歩いていた彼女が辿り着いたのは、店先からどこか懐かしい空気が漂う雑貨店だった。

にんまり顔の黒猫に誘われて

彼女が訪れた『旅猫雑貨店』は、日本各地の郷土玩具や和雑貨などを扱う小さなお店。「ニッポンの暮らし、楽しもう」を合言葉に、雑貨のほか、仏像やだるま、干支、玩具などの日本の文化にまつわる古本も取り扱っている。

ユーモラスな表情の黒猫の看板に惹かれてお店の中に入ってみると、彼女の視界いっぱいにカラフルでレトロな世界が広がる。所狭しと並ぶたくさんの和雑貨たちに出迎えられて、彼女の両目はあちらこちらへと行ったり来たり。

だるまにこけしに、こっちには風呂敷……あ、あっちには箸置きもある!

棚に並べられた品物のほかにも、壁にはお面や時計が掛けられ、天井からはキーホルダーやオブジェが吊り下げられている。それらひとつひとつを近くで眺めようと一歩を踏み出して、彼女は思う。360度、どこを見ても楽しいのだ。

まるで宝探しみたい、と胸を踊らせ、彼女は店内の端から端までじっくりと見て回ろうと心に決めた。

身近で親しみやすい「敷居の低い」和雑貨たち

店先の看板に書かれた「和雑貨」という文字が目に入った時、真っ先に彼女の脳裏によぎったのは、トートバッグに入れてきたあまり中身の詰まっていない財布の存在だった。

買い物をするつもりじゃなかったから、そんなに持ち合わせがないんだよね……

そんな風に心配していた彼女だったが、並んでいる品物の中には手軽に買って帰れそうなものもたくさんあり、彼女は自分の中の「和雑貨」のイメージが少し変わっていくのを感じていた。

「もっとお値段の張るものばかりなのかなと思っていたんですけど、どれもすごくお手頃でびっくりしました」

彼女がそう口に出すと、カウンター越しに店主の金子さんが笑顔で答えてくれる。

「そうですね。うちで扱っている雑貨は、手軽に生活に取り入れられる『敷居の低い和雑貨』なんです」

この旅猫雑貨店は、もともとは海外からの家具や雑貨の輸入に関わっていたという金子さんがオンラインショップからスタートさせたのだという。その後、「背伸びすることなく日々の中に取り入れられるような和雑貨の揃うお店を持ちたい」という金子さんの思いが形となり、この雑司が谷の地に実店舗を持つことになったのだと話してくれた。

町の駄菓子屋さんのようなノスタルジー

ふと視線を落とした彼女は、カウンター前のスペースに置かれた小さな正方形の畳を見つけた。手のひらサイズの畳なんてはじめて見た、と思わず手に取る彼女に、金子さんがそっと教えてくれる。

「そのミニたたみは、近くの畳屋さんが端切れで作って卸してくれているんです」

なるほど、だからひとつひとつ大きさや形が微妙に違っていて、縁の模様も色々なものがあるんだ。

このサイズならコースターにするのもいいし、このお店に並ぶだるまや張子の置物を置くのにもちょうどよさそうだ。そして何より「地元の畳屋さんから直接仕入れている」という縁を感じられるという点が素敵だ。

聞くと、近所の子どもたちが百円玉を握りしめてビー玉やおはじきなどのおもちゃを買いに来ることも珍しくないのだとか。彼女のように散歩がてら訪れるお客さんだけでなく、町の駄菓子屋さんのように地域の人々にも親しまれているのだ。

背伸びをしないで「和」を楽しむ

この日、彼女はミニたたみの他に、ポップな模様に一目惚れした風呂敷も買って帰ることにした。3色の小ぶりな梅の花柄と赤い縁取りがとてもかわいらしく、「これで職場に持って行くお弁当を包もう」と手に取ったものだった。

「風呂敷」というと少し古めかしいイメージを思い浮かべていた彼女だったが、このお店に置かれているアイテムはどれも色使いが鮮やかで、眺めているだけでも楽しい。

確かに、これなら手軽に楽しく使えそうかも。

先ほど聞いた「敷居の低い和雑貨」という言葉を思い出しつつ、彼女は自身の左手の親指に貼られた絆創膏を見た。その指の傷は、お弁当箱に詰めるための作り置きのおかずを作っている時に包丁で切ってしまったものだ。

次の連休は家でゆっくり料理の練習でもしようかな、と考えながら、彼女は西日を背に家路につくのだった。

Editor's Note

雑司が谷の住宅地に居を構える『旅猫雑貨店』は、昔ながらの郷土玩具や古本、和雑貨を扱う小さな雑貨店。お店の中に入った瞬間、そのレトロで懐かしい雰囲気の虜になってしまいました。

店内に並んでいる生活雑貨や張り子はお手頃なものが多く、店主の金子さんがおっしゃっていた「敷居の低い和雑貨」という言葉がとても印象的でした。日本ならではの文化を感じられる雑貨を背伸びをせずに日常に取り入れることができるって素敵ですよね。

もちろん猫雑貨も取り扱っているので、猫好きな方へのプレゼント探しにも。(編集部 フクシマ)

Shop Access

Shop Info

旅猫雑貨店

水木金 12:00〜19:00/土日祝 11:00〜18:00

月・火

03-6907-7715

東京都豊島区雑司が谷2-22-17

雑司が谷駅 徒歩5分/池袋駅 徒歩15分

※取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせください。
Editor 福島みづき
Photographer 鈴木伽奈

SNS share