綴ることで私の“今”をそっと守ってくれるノート

彼女のデスクの引き出しには、色とりどりの小さなメモ用紙がたくさん詰まっている。

まるい文字で書かれたメッセージと、脱力系の手書きのイラストが書かれたそのメモの差出人は、彼女の隣の席の先輩。彼女が仕事でミスをして上司にこっぴどく叱られたときや、大きな契約をもぎ取ってきたとき、彼女のデスクにはいつも1枚のメモが置いてあった。

チャットではなく手書きだからこそ伝わる、励ましや労いの言葉たち。デジタル化の進む職場だからこそ「紙に書くこと」の意義に気付いた彼女は、蔵前の文具店『カキモリ』を訪れていた。

「書くことのたのしさ」に溢れる文具店

『カキモリ』は、蔵前駅から徒歩8分ほどの場所に佇む文具店。

「たのしく、書く人。」というコンセプトのもと、2010年のオープン以来、お店を訪れた人にとっての「書くきっかけ」になり続けている。

木のあたたかみが感じられる店内には、世界各国から集まったボールペンや万年筆、鉛筆などの筆記具や、レターセットやメッセージカードなどがずらりと並んでいる。また、同じ蔵前エリアにオリジナルカラーのインクをつくることのできる「inkstand」を構えるなど、オリジナルの顔料インクも多くの書き手に愛されている。

彼女が今日ここに足を運んだのは、オーダーノートを仕立てるためだった。このカキモリでは、表紙や中紙を自由に選んで自分だけのノートを作り上げることができるのだ。

下町の確かな技術を身近に感じて

カキモリのオーダーノートの魅力は、何と言ってもそのカスタマイズの多様さだ。サイズはB5、B6の2種類から縦横両方を選ぶことができ、表紙は常に約60種類以上、中紙は約30種類以上取り揃えられている。また、リングの色や留め具のタイプなど、ありとあらゆるパーツをその場で見比べながら自分の手と感性で選ぶことができる。

表紙に使われている素材は紙のほか、レザーやファブリックなどバラエティに富んでいる。この蔵前エリアにはもともと手帳の職人街があり、カキモリに並ぶ表紙もそうした下町の職人さんたちの手で作られているのだ。

また、万年筆での筆記に適した「バンクペーパー」、鉛筆で書くのに向いているザラザラした手触りの「コミック紙」など、中紙の豊富な品揃えにもカキモリの書き手に対する想いが表れている。書きたいものをのびのびと表現できる自分のためのノートを作るという体験は、まさにこのカキモリならではだ。

それはきっと、想いを守ってくれるノートになる

彼女がノートを作ろうと思ったきっかけは、デスク周りを掃除している時に例のメモたちを読み返したことだった。ほんの一言のメッセージなのに、ひとつずつ読んでいくと、先輩からその言葉を受け取った時の情景や感情がはっきりと浮かび上がってくる。まるで、その時の空気も一緒に文字の中に閉じ込めてしまったような……彼女には、そんな風に思えた。

先輩がくれたあのメモみたいに、自分が今考えていることや思っていることを、未来の自分のために残したい。閉じ込めておきたい。

手書きの魅力に改めて気付いた彼女は、そうした想いから、日記を綴るためのノートを仕立てようと思い立ったのだった。

店内の製本機で、彼女のオーダーしたノートがゆっくりと形になっていく。がちゃり、がちゃり。とんとんとんとん。店員さんの手作業で仕立てられていくノートは、何だかとても眩しく見える。

こうしてオーダーで仕立てたノートは、使い終わってもまた中身を交換することができる。使い続けることで愛着の湧いた表紙はそのままに、また違った種類の中紙を試してみたり、自分が書きたいものにぴったりの形を探すことができるのも嬉しい。

お店を出た彼女に、夏の蝉の声のシャワーが降りかかる。いつか、今日のことを綴ったページを読み返すときの彼女にも、同じ鳴き声が聞こえていることだろう。

Editor's Note

「紙に書くこと」の楽しさと魅力に改めて気付くきっかけをくれる『カキモリ』。広々とした店内に並ぶたくさんのペンや便箋などを手にとっているうちに、紙の上にペン先を滑らせるあの感触を味わいたくなってきて、たくさん試し書きをしてしまいました。

また、記事の中に登場しているノートは実際に取材の時に作っていただいたもので、読書記録&日記帳として楽しく使わせていただいています。やっぱり、お気に入りのノートが1冊手元にあるだけで、書くことがグッと楽しくなりますね! 目を引く柄なので、お部屋のアクセントとしても楽しませてくれています。(編集部 フクシマ)

Shop Access

Shop Info

カキモリ

11:00〜19:00

月(祝日の際は営業)

050-1744-8546

東京都台東区三筋1-6-2

蔵前駅 徒歩7分

※取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせください。
Editor 福島みづき
Photographer 橋本越百

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