西荻窪
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“ただいま”を言いたくなる古民家のブックカフェ

最後に「ただいま」と口にしたのはいつだろう。一人暮らしを始めてから、ただいまも、おかえりも、何だかうんと遠いものになってしまった気がする。

そんな寂しさを思い出したとき、彼女が決まって訪れる1軒のブックカフェがある。もうすっかり秋めいている10月の空を仰ぎ、彼女はオレンジ色の中央線に乗り込んだ。

01

古民家ならではのゆったりとした空間に抱かれて

西荻窪駅の南口から7分ほど住宅街の中を歩いていくと、やがて蔦の絡まる大きなモチの木が見えてくる。その後ろにそっと寄り添うように佇んでいる古民家が、彼女の目的地『松庵文庫』だ。

青々とした緑に出迎えられて、彼女は入り口の扉に手を掛ける。靴を脱いでスリッパに履き替え、大きく息を吸い込むと、ふんわりとあたたかみのある木の香りが胸の中に満ちていく。

築80年を超える古民家をリノベーションしたこの『松庵文庫』は、店内の本を自由に読みながら過ごせるカフェスペースと、店主の岡崎さんがセレクトした雑貨や食器を扱うショップが併設されたお店。長い年月を経ているからこそのゆったりとした穏やかな空気に包まれて、ほっと心を落ち着けることのできる空間だ。

住宅街の中に突然現れる大きなモチの木と『松庵文庫』のプレートが目印
住宅街の中に突然現れる大きなモチの木と『松庵文庫』のプレートが目印
大きな窓から陽の光が差し込む、あたたかみのあるカフェスペース
大きな窓から陽の光が差し込む、あたたかみのあるカフェスペース
当時のままの空気感を受け継ぐため、壁の質感や柱など古いものをあえて残してあるのだという
当時のままの空気感を受け継ぐため、壁の質感や柱など古いものをあえて残してあるのだという
昔ながらの趣が感じられる外観。2階はギャラリースペースとなっている
昔ながらの趣が感じられる外観。2階はギャラリースペースとなっている
02

「暮らしの時間」を守り続ける場所

もともとは音楽家のご夫婦が住まわれていたというこの古民家がこうしてブックカフェとして生まれ変わったのは、2013年頃のこと。家を手放すことを決めた家主さんに招かれてこの家を訪れた岡崎さんは、「この家は残さなくてはいけない」と強く感じたのだという。

人が集う場所として新たな歴史を重ねていくにあたりリノベーションされた松庵文庫だが、人々が生活していた場所だからこその空気感をそのまま受け継ぐため、カフェスペースの古い柱や壁の質感などは当時のままの状態で残されている。

玄関に入った瞬間に感じる郷愁にも似た懐かしさは、この家が過ごしてきた時間を守り続けてきた岡崎さんをはじめとするお店のスタッフさんたちの志の賜物にほかならないのだ。

ショップのアイテムは岡崎さんやそのご友人が「使って良かった」と感じたものを中心にセレクトされている
ショップのアイテムは岡崎さんやそのご友人が「使って良かった」と感じたものを中心にセレクトされている
カフェでも使用されている、とろりとした質感が魅力の吹きガラスのワイングラス(¥4,500/税抜)
カフェでも使用されている、とろりとした質感が魅力の吹きガラスのワイングラス(¥4,500/税抜)
オーガニックのはちみつやフェアトレードのコーヒー、フランスから輸入された専門店のお茶なども並ぶ
オーガニックのはちみつやフェアトレードのコーヒー、フランスから輸入された専門店のお茶なども並ぶ
しなやかな竹で作られた極細のお箸(¥1,000/税抜)は、京都の職人さんによる手作り
しなやかな竹で作られた極細のお箸(¥1,000/税抜)は、京都の職人さんによる手作り
03

本と、空間と、続いていく時を過ごす

窓際のソファ席に腰を下ろした彼女は、オーダーを済ませ、左手に広がる庭を眺めながら「今日は何を読もうかな」と思案した。カフェスペースの中央にある本棚へと向かい、並んでいる本をいくつか手にとってみる。

店内の本棚に置かれている本は、松庵文庫と同じく古民家を改装して作られた荻窪の書店「Title」によるセレクト。うつわや料理、家や暮らしにまつわる本から、小説、図鑑など、そのラインナップは多岐に渡る。長い時を見つめ続けてきた空間で、これから一緒に時を重ねていきたいと思わせてくれる本に出会うことができるというのは、とても特別な体験だ。

あたたかいカフェラテに口をつけ、本棚から借りてきた植物図鑑のページを開くと、彼女は心の中で再びそっと「ただいま」と言葉にしてみる。窓の向こうで、秋の穏やかな陽光が大きなツツジの木を照らしていた。

窓際のソファ席が彼女のお気に入り。ゆったりと流れる優しい空気に身も心もたっぷりリラックスできる
窓際のソファ席が彼女のお気に入り。ゆったりと流れる優しい空気に身も心もたっぷりリラックスできる
もともとはお風呂場だったというスペース右奥のガーデンルームには、当時の名残のタイルが
もともとはお風呂場だったというスペース右奥のガーデンルームには、当時の名残のタイルが
樹齢100年にもなる立派なツツジの木。ここまで大きなものは他ではなかなか見ることがない
樹齢100年にもなる立派なツツジの木。ここまで大きなものは他ではなかなか見ることがない
店内に置かれている本は荻窪の有名書店「Title」のセレクト。気に入った本はその場で購入できる
店内に置かれている本は荻窪の有名書店「Title」のセレクト。気に入った本はその場で購入できる
それぞれのテーブルの上にも、自由に読むことができる文庫本が。こちらは岡崎さんの私物がメインなのだそう
それぞれのテーブルの上にも、自由に読むことができる文庫本が。こちらは岡崎さんの私物がメインなのだそう

EDITOR’S
NOTE

編集後記

はじめて訪れる場所のはずなのに、玄関先で靴を脱いで上がり框につま先を乗せた瞬間に、思わず「ただいま」と言ってしまいそうになる。『松庵文庫』は、そんな懐かしさに満ちた空間でした。

明るく開放的なカフェスペースでソファに腰を下ろすと、まるで歴史を重ねてきた家の息遣いが聞こえてくるよう。あの生活の場であったからこそのぬくもりは、他のお店にはない松庵文庫の魅力です。

岡崎さんやそのご友人によるセレクトだというショップに並ぶアイテムも、いつまでも眺めていても飽きない素敵なものばかり。今度はぜひプライベートで訪れたいと思います。

編集部:Mizuki
Editor Mizuki
Editor | 福島みづき
Photographer | 橋本越百

SHOP INFO

松庵文庫のマップ
店舗名
松庵文庫
住所
東京都杉並区松庵3-12-22
アクセス
西荻窪駅 南口 徒歩7分
営業時間
水〜金 11:30〜21:00/土日祝 11:30〜18:00
定休日:月・火
電話番号
03-5941-3662
※ 取材時期や店舗の在庫状況により、掲載している情報が実際と異なる場合があります。 商品情報や店舗の詳細については直接店舗にお問い合わせ下さい。

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